ayako_no7の日記

シュート!にまつわるあれこれを残す場所。 原作オタク。

シュート! Goal to the Future 第13話感想

サブタイトルは「始まり」。掛川高校と野間田高校の県大会決勝戦が繰り広げられる最終回です。

今回の試合は今までの中で1番まともだったと思う。ボールを持った選手に真面目にチャージしてるのを初めて見た気がする。GKもいつもの棒立ちじゃなかった。この前「メインキャラクターからGKを外したのは、シュートがぽんぽん入るほうが試合をシンプルに進められるからか」と思ったんですが、あながち間違いではなかったのかもしれない。有能なGKがいるとシュートを阻まれてしまってストライカーのすごさを表現しづらいし、GKをどうやって攻略するかという要素を入れなきゃいけないですからね。GKのキャプテンの見せ場があったのはよかったです。

試合は取ったり取られたりしつつ、結局は3-2で掛川高校の負けで終わりました。試合中に「半年前に負けた相手から先取点を取れた」みたいなセリフが出てきてビックリした。え、あの練習試合からそんなに経ってたの?地区大会の決勝は、現実に即したスケジュールなら11月頭。1話ではセミ(ミンミンゼミ)が鳴いていて、生徒たちは基本的にずっと半袖(もしくは長袖の腕まくり)である。つまりこのアニメの舞台となっているのは、5月からセミが鳴き、11月でもシャツ1枚で過ごせる気候の世界なのであった。私の知らない間に南極でセカンドインパクトが起こったのかもしれない。

そして試合が比較的まともだといっても、メインとなるのは試合の内容ではなく、仲間を得た秀人と1人でサッカーをしている公平の対比なわけです。しかし野間田のチームメイトはこれといって公平から距離を置いたり手を焼いたりしているわけではなく、公平をきちんと仲間だと認めているいいやつばかりだった。今回の公平はシーンによって顔が全然違うので作画担当のモチベーションが気になりましたが、チームメイトから言葉をかけられ、さらに秀人が自分を見てくれていることを知り、秀人の左のシュートを間近に見て成仏していました。ここの左のシュート、なにげにメガネとのカウンターシュートっぽかった。突然の松下くんリスペクトなのか、単なるパスのつもりなのかは分かりません。

私はトシや和広に基本的に何の思い入れもないので、トシがそれなりに苦労して身につけた「幻の左」を秀人があっさり打っても特に何も思わないんですよね。たぶん普通のファンっていうのはこういうテンションなんでしょう。2話で出てきた適当な11人抜きでハァ!?ってなったり、引退のくだりで激怒したりするガチ勢はお呼びでないのです。そしてこの試合、観客席にはトシと和広が来てるんですが、「それなら健二も呼んでやれよ」と心の底から思った。GKをメインキャラにに入れないとなると健二の役割がないのは分かるけど、誰もが認めるトリオなんだからさ!トシと和広が一緒に試合を見にいくなら、絶対に健二も誘うでしょ。そこをないがしろにしないでほしかった。

さて今回の試合で大きな意味を持っていたのが、「ボールを持ったら観客すべてが自分を見ていると思え そしていけるところまでいけ 一歩でもボールをゴールへ近づけろ」という例のセリフです。これ、GttFでは「一歩でも前へ進む(未来へ向かう)」という意味合いで使われていて、根本的な解釈が自分と違うんだということがやっと分かりました。なぜなら原作では、このセリフの前に「サッカーはチームプレーがすべてじゃない」というひと言が付くからです。つまり私はこのセリフを、「もっと自分勝手に貪欲になっていいんだ、個人の力を100%引き出せるサッカーをしよう」という意味でとらえているんですよね。なんせチームプレーを重視するあまり神谷さんをハブにした斉木さんの目の前で久保さんが言い放ったセリフだから。そして原作でこのセリフの意味を身をもって表現したのが、スマートさと聞き分けのよさがアダになりがちな和広なわけです。和広は主張の激しいプレーをしないせいで、そこを相手につけ込まれていましたからね。神谷さんは久保さんに言われんでも自分の思うままに自由なプレーをしてますが。久保さんのこのセリフは、神谷さんというプレイヤーを知ったからこそ生まれたのかもしれないと今さらながらに思います。

だから自分のサッカーをこれといって持たず、サッカーをやる理由ややらない理由を人のせいにしている新アニメの子たちがこのセリフに共感しているのがどうにもしっくりこなかったんですが、前へ進めっていうシンプルな意味で使われているのであれば納得です。そしてその意味合い通りに、笛が鳴るまで諦めなかったのはえらかったと思う。この解釈の違いについては、これはこれでいいと思うんですよ。個性を引き出すサッカーをこの尺でやるのは無理だし。しかしそうなるとこのおっさん、やっぱり私の知らんおっさんだなという確信が深まります。最終的に新アニメの子たちが一生懸命に打ち込み、「サッカーが楽しい」という気持ちになったところで終わるのはよかったと思う。これは原作の子たちは皆がもってるものであり、スタートラインであり、サブタイ通り「始まり」にあるものだと思う。やっとそこまでたどり着いたのね。そして今大会で引退する佐原と園田の「負けて悔しい」という気持ちを描いてくれたのもよかったと思います。

さて後日談では、謎のおっさんが墓参りをしていました。これがたぶん「原作ファンにうれしい要素」とやらでしょう。まず健二を酒屋のおっさんにしたのはまったく意味が分かりません。なんで?どういう意味があるんだ?GKってフィールドプレイヤーより選手生命が長いイメージがあるんですが引退してるのか。しかもなぜ酒屋?どういうセカンドキャリアの選択なんだよ。元日本代表だぞ?和広が医者になってるのとか、なんでそうなったのかがさっぱり分からない設定が多くてモヤる。

ここではペプシと例の写真が登場し、「あ~…」となる私。もうほんと作品サブタイ通りに未来のことだけやっていてほしかった。謎のおっさんは茶摘みとカレーづくりをやらせる謎のおっさんのままでいてくれ。ていうかもうすでに、監督のことは原作とは何ら関係のない謎のおっさんとしか見ていないので魔の6話みたいなダメージはないんですけど「どこをどう解釈したらこのセリフが出てくるんだ?」という疑問は抱かざるを得ない。具体的には「(監督をやったことで墓前に)報告ができる」とか「俺たちができなかったことを託せる」とか「今のサッカー部は俺たちがいたころよりおもしろいかもしれない」とかそういうやつです。

私は自分のサッカーを貫いて行けるところまで行って全部自分たちの力でつかみ取って夢を現実にして、世界のフィールドに立った神谷篤司が大好きなんですよ。久保さんも惹かれた頑固で自由なサッカーと生き方が好きなんです。神谷さんは公式に日本代表の司令塔になってW杯決勝まで行ったわけですが、それでもずっと久保さんの10番を追い続けて、でもそれは後ろ向きなものではなくて、「俺がお前の見たかった景色を全部見せてやる」「お前が見たかったものを隣に並んで一緒に見るのは俺だ」という感じだと思っています。なのでいつか神谷さんが久保さんと再会したときには「お前の隣に並べた気がする」って言ってほしいし、久保さんには「神谷は世界一のプレイヤーだよ」って言ってほしい。というか、絶対にそうだって死ぬまで思っていたいんですよ。だから引退のくだりに関してはたぶん一生許せないし、墓前に足向けできないみたいな流れはまったく理解できない。そもそも報告っていっても、監督としてたいしたことやってないやんけ。

あと俺たちができなかったことってなんなのかが本気で分からない。選手権ではズタボロになりながら優勝旗をつかんだしインハイ予選の命日の試合だって勝って全国へ行ったし、そこでも全国優勝したし。「蒼き伝説」を踏襲しているとしても前工戦まではやってるはずなので、国立には行ってるはずだ。私が知る限り夢のままで終わらせたことなんてないんだけど。セカンドインパクトが起こった結果、並行世界が爆誕した可能性が高い。

そして新アニメのサッカー部はある意味おもしろいのは間違いないですけど、もう少し私が大好きなあの子たちのサッカー部を大事にしてくれよ~~~。「大事なのは過去ではなく未来」「目指すべきゴールは前にしかない」というテーマがあるのは重々承知ですが、謎のおっさんに私の青春でもあるあの子たちのサッカー部をそんなふうに語られるのは悲しいです。

久保さんといえば出番が結局序盤のあれだけだったというのは大変びっくりした。カジュアルな感じの「後は頼むぜ」が思い出されます。このセリフ、11人抜きをしてピッチに倒れた久保さんが苦しい息の中で言った神谷さんへの最期の言葉なんだけど、全然そんな雰囲気がないんだよね。今回の墓参りのくだりで、新アニメ勢にも今はもういない人だというのは伝わったかと思いますが久保さんと神谷さんにまつわる大事な部分の解説がごっそり抜け落ちているので、このエピソードいる?と思われてないだろうか。かといって原作オタクが喜ぶような展開でもないのが謎すぎる。やっぱり原作の要素をもっと排除したほうがよかったとしか思えません。あと最後のいつもならアンサーが入る部分のところ、久保さんの「サッカー好きか?」のひと言を入れたほうがよかったと思う。そこは作中でネタばらししておこうよ。

13話単体としては、あの予想を裏切りまくるトンデモ展開をシュート!を構成するひとつの要素に収束させたという点では評価できます。墓参り周辺のエピソードがカジュアルな原作ファンにとって許容範囲なのであれば、評価を変える人もいるかもしれない。私はガチ勢オタクなので見たくなかったですけど。

これまで13話の感想を書いたら終わる!という気持ちでがんばってきましたが、もうあと1回総括編を書こうと思います。需要ないと思うけど。

(続いてしまうらしい)